加賀友禅作家「由水十久」の着物の特徴は?買取相場や高価買取のポイントとは
由水十久(ゆうすいとく)は、加賀友禅作家の中でも珍しい「人物画」を取り入れた作家です。
日本だけでなく海外でも愛されるほどの作品へのこだわりは、亡くなった後も息子たちに引き継がれ、今では次男が2代目由水十久として世に広め続けています。
記事の最後には由水十久の作品を高額で査定されるためのコツもご紹介するので、お持ちの際はぜひ参考にしてみてください。
由水十久(ゆうすいとく)とは?
引用:http://www7a.biglobe.ne.jp/~igusa/yusui.html
由水十久(ゆうすいとく)とはどのような人物で、どのような作品を生み出したのでしょうか。
以下で詳しく解説します。
由水十久の特徴と経歴
由水十久(本名:徳男)は、1913~1988年かけて活躍した日本の加賀友禅作家です。
1927年の14歳のときから京都府の紺谷静焦のもとで10年以上友禅染を学び、25歳のときに独立しました。
独立してからは地元金沢市へ戻り、金沢市の伝統工芸を大切にしながらも、絵画のような文様の制作に取り組みます。
1966年頃になると日本各国で個展を開催し、1975年には「加賀友禅由水十久作品集」を出版しました。
次第に由水十久の技術の高さが評価され、1977年には伝統工芸士、1978年には石川県の指定無形文化財加賀友禅技術保持者に認定されます。
その後は日本国内だけではなく、イギリスやドイツ、アメリカなど海外にも活躍の場を広げます。
1984年には、84年版「ユニセフ・グリーティングカード」のデザインに染絵集「うなゐ」から2点の作品が採択されました。
「うなゐ」とは髪を首のあたりで切りそろえた幼い子どもという意味で、文字通り由水十久は中国の幼い子どもを描いた文様を多く誕生させました。
由水十久は1988年75歳で生涯の幕を閉じますが、その遺志は息子に引き継がれ、次男は2代目由水十久として、由水十久の名を守っています。
〈経歴一覧〉
1913年(0歳) | 石川県金沢市で生まれる |
1927年(14歳) | 紺谷静焦のもとで友禅染を10年以上修行 |
1938年(25歳) | 独立 |
1947年(34歳) | 金沢に戻り、仕事をはじめる |
1966年(53歳) | 日本各地で個展を開催する |
1975年(62歳) | 「加賀友禅 由水十久 写真集」を出版 |
1977年(64歳) | 伝統工芸士に認定 |
1978年(65歳) | 石川県指定無形文化財 加賀友禅技術保持者に認定される、染絵集「うなゐ」を出版 |
1982年(69歳) | イギリス・オックスフォード、西ドイツ・デュッセルドルフ・アメリカ・シアトルで個展を開催、染絵集「夢幻泡泛」を出版 |
1983年(70歳) | 第6回「石川テレビ賞」を受賞する |
1984年(71歳) | 84年版「ユニセフ・グリーティングカード」のデザインに、染絵集「うなゐ」から2点の作品が採択される |
1988年(74歳) | 逝去 逝去後、「第8回伝統文化ポーラ大賞」を受賞 |
次男の充が2代目由水十久へ
1988年の初代由水十久の死後は、長男と次男が初代由水十久の遺志を引き継ぎ、加茂友禅作家として活動しています。
長男は由水煌人として、次男は1989年から2代目由水十久を名乗り活動しています。
次男である2代目由水十久は、1996年に初代由水十久と同じく伝統工芸士に認定され、同年の1996年と1999年には伝統加賀友禅展で金賞を受賞しました。
現在でも初代由水十久の遺志を受け継ぎ、国内外で個展を開催したり作品集を刊行したりと精力的に活動しています。
「由水十久」の着物の特徴
引用:https://kobayashigofuku.com/gallery/%E7%94%B1%E6%B0%B4%E5%8D%81%E4%B9%85/
「由水十久」の着物には普通の着物とは少し異なる特徴があります。
以下では、由水十久の着物にあしらわれたモチーフやこだわり、落款について解説していきます。
加賀友禅では珍しい人物画をモチーフにする作家
由水十久は着物のモチーフに、加賀友禅では珍しい人物画を用いていました。
着物の模様に人物画を用いることは技術的に難しいため、一般的な加賀友禅では草花がモチーフにされています。
由水十久の着物には、由水十久が好んだとされる童(わらべ)が、加賀友禅特徴の臙脂(えんじ)・藍(あい)・黄土(おうど)・草・古代紫の加賀五彩で描かれています。
代表作は「訪問着の秋野」「訪問着の橋牛」「良寛と童色留袖」です。
由水十久のデザインへのこだわり
引用:http://www7a.biglobe.ne.jp/~igusa/yusui.html
加茂友禅では模様のモチーフに草花が用いられることが多いのですが、由水十久は人物画をモチーフにするこだわりを持っていました。
代表的なのは唐子(中国の小さい子ども)のデザインで、髪の毛や服装、表情の細かい部分まで繊細に描かれています。
着物を弟子や人形に何度も着させて下絵を完成し、糸目糊(いとめのり)を繊細に置いて色の混ざりを防いでいました。
妥協のない下絵と、細かくて繊細な作業によって描かれた人物画は、今にも動き出しそうなリアリティさが特徴です。
また由水十久は、着物の着姿にも強いこだわりがあり、着物を身につけた人が360度どこからでも美しく見えるように、下絵の段階で弟子に何百回以上もポーズを取らせたと言われています。
このような妥協のない着物制作への姿勢が、多くのファンを惹きつける理由の一つでしょう。
由水十久の落款
落款(らっかん)とは誰が仕立てたかが分かるサインのようなもので、落款を見れば作者や作られた年代などが特定できます。
初代由水十久の落款は、縦長の長方形の中に縦長の「十」、「久」の上部が十に少し重なる形で書かれているデザインです。
ちなみに2代目由水十久の落款は、縦長の六角形の中に初代由水十久と同じ「十」と「久」が配置されています。
そのため初代か2代目かは、枠の形が長方形か六角形かで見分けられます。
由水十久の着物の購入・買取相場はどのくらい?
引用:http://www7a.biglobe.ne.jp/~igusa/yusui.html
初代由水十久の着物は希少価値が高く、買取相場は~200,000円です。
買取価格は着物や帯の流行、着物の状態、作成された年代などで変動します。
由水十久の着物で高価買取が期待できるものは、「本場加賀友禅訪問着」や「本場加賀友禅色留袖」です。
「本場加賀友禅訪問着」や「本場加賀友禅色留袖」は、あまり市場に出回らない珍しい着物なので、数十万~数百万円で取引されることもあります。
由水十久の着物を高価買取するポイント
由水十久の着物を少しでも高く売るためのポイントを3つ紹介します。
由水十久の落款がついているか
由水十久の落款の有無で査定額が変わります。
特に加賀友禅の場合、加賀友禅作家として認定されるには、加賀染振興協会に落款を登録されなければならないという特徴があり、落款は査定において非常に重要です。
初代由水十久の着物は大変貴重で価値が高いため、2代目よりも初代の落款がついている着物の方が高値で買い取られます。
着物の状態は綺麗か
着物の状態がよいものは高価買取が期待できます。
特に、初代由水十久はすでに亡くなっているため、現在出回っているほとんどの着物が中古品です。
そのため、より新品に近い美品の方が高い値が付きます。
着物は湿気に弱く、タンスに長年しまっておくとシミ、シワ、カビ、ホコリが発生し、買取価格が大幅に低下してしまう可能性があるので注意が必要です。
着物は必ず定期的に陰干しをし、熱がこもらないように風通しをよくしましょう。
また、着物をタンスにしまう際にはシワにならないように綺麗に畳み、たとう紙で包みます。
たとう紙は通気性がよい和紙でできており、着物の湿気を取る効果があります。
万が一着物に汚れがある場合、落とせそうな軽い汚れはやわらかい布で優しく拭き取ってから査定に出しましょう。
クリーニングに出さないと落ちないような汚れは、それ以上傷つけないためにもあまり触らず、状態が悪くなる前に査定に出す方が無難です。
着物買取専門店で査定がおすすめ
着物は着物買取専門店での査定がおすすめです。
由水十久のような特定の作家が制作した着物は価値の見極めが非常に難しく、着物に精通した査定士でないと安く査定をされてしまう可能性があります。
着物の買取はリサイクルショップや古着屋などでも可能ですが、正しい査定価格で買い取ってもらうためには着物の査定に精通した専門家のいる買取専門店で査定に出しましょう。
買取専門店であれば、着物の査定経験や知識の豊富な査定士が対応するので、価値が下がることはありません。
まとめ
由水十久は、友禅では珍しい人物画を題材に着物を制作した加賀友禅作家です。
人物画の細かさやどの角度から見ても綺麗に見える構図が高く評価され、伝統工芸士や石川県の指定無形文化財加賀友禅技術保持者などに認定されました。
現在では息子が後を継ぎ、次男の2代目由水十久によって由水十久の名が守られています。
由水十久の着物は高価買取が期待できますが、状態が悪くなると価値が下がってしまうので、早めの査定がおすすめです。
由水十久の着物や帯をお持ちの場合は、経験豊富な査定士が在籍する買取専門店「ウリエル」へお任せください。
2つの買取方法