着物の保管に使われる「たとう紙」について解説!選び方や使い方も
「たとう紙(たとうし)」は一般的にはあまりなじみのない言葉かもしれません。
たとう紙には着物を保管する際に包むための紙で、さまざまな役割があります。
ここでは、たとう紙について分かりやすく解説します。
たとう紙とは
たとう紙は着物を包むために使用する紙のことを指します。
着物を収納や保管する際は、この「たとう紙」の存在が必要不可欠です。
そもそも、紙で物を包むという文化は平安時代にさかのぼるといいます。
当時は着物を包むことはもちろん、贈り物の際も紙に包んで贈ったそうです。
そんな紙にものを包む文化が、今もなお「たとう紙」として残っています。
たとう紙の役割
着物の保管に際に、たとう紙を用いることにはさまざまなメリットがあります。
それぞれ解説するので参考にしてみてください。
カビ対策
たとう紙は紙でできているため、湿気を吸う性質を持っています。
そのため、たとう紙を使うことでカビが発生しにくくなるでしょう。
また、着物は水分に弱く湿気を含んだ状態で放置しておくと、傷みや色あせの原因にもなるため、たとう紙はそういったトラブルからも守ってくれます。
ホコリを避ける
ホコリが付着したまま長期間放っておくことで、シミができてしまうことがあります。
そのため、あらかじめたとう紙で着物を包み、ホコリから守っておくとよいでしょう。
また、ホコリは虫食いの原因ともなるヒメマルカツオブシムシの餌となり、大量発生を招く可能性があります。
虫食いの対策としてもたとう紙の存在は一役買ってくれるでしょう。
シワを防ぐ
紙の表面がざらざらな素材のため、たとう紙で包んで保管しておくと中の着物が崩れることが少なくなります。
着物が崩れてしまうとシワの原因にもなるため、あらかじめたとう紙で包んで着物のシワを防ぎましょう。
たとう紙の選び方
引用:お祝いの着物
https://oiwai-kimono.com/teire-syuunou/knowledge_kimono-syuunou-tatoushi.html
ここからはたとう紙の選び方について解説します。
たとう紙のサイズ
たとう紙のサイズは着物の種類によって使い分けるのが一般的です。
主なサイズは以下の通りです。
・特大サイズ(およそ87cm) ・ 2つ折りサイズ(およそ83cm) ・ 3つ折りサイズ(およそ64cm) ・3つ折り小サイズ(およそ55cm) ・4つ折りサイズ(およそ48cm) |
着物の大きさによって使い分けましょう。
たとう紙は和紙か洋紙どちらがよい?
たとう紙には和紙と洋紙の2種類が存在します。
どちらもメリットがあるので自分に合ったものを選択しましょう。
和紙
和紙の主な原料は以下の3つです。
・楮(こうぞ) ・雁皮(がんぴ) ・三椏(みつまた) |
3つとも長い繊維が特徴で、繊維同士が結びつきやすいため、保存性に優れています。
洋紙
原料にはパルプが使われています。
パルプは植物や木材の繊維を抽出し、薬品によって繊維を結合させたものです。
印刷用の紙として用いられることが多く、安価で製造できます。
しかし、薬品による結合のため繊維がほどけやすく、劣化が早いのも特徴です。
たとう紙として使うなら?
着物を大切に着るためには、たとう紙に和紙を用いるのがよいでしょう。
その理由の1つは材質です。
和紙は表面がざらざらとした素材のため、包んでいる間に着物が滑りにくいという性質があります。
表面が滑りやすいと中で着物が崩れてシワになるのでざらざらとした和紙の方がたとう紙にはよいでしょう。
また、洋紙よりも和紙の方が長持ちするのも和紙がたとう紙に向いている理由です。
洋紙に使われるパルプは長期間経つと繊維がほどけ劣化するため、繊維の結びつきが強い和紙のほうが長持ちします。
ただし、洋紙の方が安価なため、何度も交換する場合は洋紙のたとう紙もおすすめです。
たとう紙の紙質と値段
たとう紙は紙の質によって値段が変わります。
紙の性質と値段を比較したうえでたとう紙を選ぶとよいでしょう。
紙質の特徴と値段の例は以下の通りです。
厚口和紙
厚口和紙は吸湿性や耐久性に優れており、たとう紙の中ではかなり優秀な紙質です。
1枚あたりのお値段は1000~4000円と高価なものが多いですが、着物の保管には適しています。
厚口和紙のたとう紙は高価な着物を包む際に使用するとよいでしょう。
中性紙
中性紙のたとう紙は耐久性も高く通気性にも優れています。
値段も500円前後と、和紙に比べると安価で済むため値段を抑えたい方にはおすすめです。
しかし、和紙ほどの吸湿性はないため、除湿剤で補う必要があります。
クラフト紙
クラフト紙のたとう紙は1枚あたり100~200円と安く購入できるため、気軽に交換できるのが魅力です。
しかしながら、他の紙に比べて吸湿性は劣るため、除湿剤のなどの湿度対策をする必要があります。
普段使いの着物を収納するときはよいですが、特別な席で着るような高価な着物には使用は控えた方がよいでしょう。
たとう紙の使い方
たとう紙は、以下の方法で使用します。
- 1.たとう紙の中央に畳んだ着物を置く
- 2.左右の紙を内側に折り込み、紐を結ぶ
- 3.上下の紙を内側に折り込み、二箇所の紐を蝶々結びで結ぶ
また、たとう紙を扱う際には、いくつかの点に注意する必要があります。
以下で、たとう紙の扱いに関する注意点を確認しましょう。
1枚のたとう紙に何枚も着物や帯を入れない
着物の購入時に長襦袢や帯がセットになっている場合、まとめて保管できると楽です。
しかし、たとう紙1枚に対して入れる着物や長襦袢は1枚のみにしましょう。
例えば、長襦袢にカビや虫食いが起こった際、同じたとう紙で保管していると、着物にも同様の被害が及ぶ可能性がありますが、別で保管していると被害の拡大を防止できます。
長期的に優れた状態で着物を保存するためにも、たとう紙はアイテムごとに用意することが大切です。
たとう紙の薄紙は外してから保管する
着物の見栄えをよくするためにたとう紙と同梱されている薄皮には、糊が含まれています。
この糊は、将来的に虫を発生させる要因となります。
たとう紙内に虫が発生すると虫食いの原因となるため、たとう紙にある薄皮は、必ず外してから保管するようにしましょう。
また、薄皮を外していても、長期的な保管で湿気が溜まることによって、虫が発生する可能性もあるので、定期的に空気を入れ替えたり、たとう紙を交換したりすることが大切です。
たとう紙で包む前に着物の汚れを落としておく
たとう紙で着物を包む前には、着物に付着した汚れをしっかり落としておきましょう。
汚れが付着した状態で保管していると、たとう紙の中で虫が湧き、虫食いの原因となる場合があります。
汚れは着物用の柔らかいブラシを使い、優しく払うイメージで取り除きましょう。
硬いブラシを使うと、生地を傷つける可能性があるので注意が必要です。
ブラシを使って丁寧に手入れをしてから保存することで、着物の美しさを長期的に維持できます。
たとう紙を交換する目安と時期
たとう紙が湿気などを含んでいる場合は交換が必要です。
もし湿気を含んだ状態で着物を包んでしまうとたとう紙そのものが着物のカビの原因になるので注意しましょう。
また、たとう紙は湿気を含みすぎて変色することもあります。
変色したたとうし紙は着物に色を移してしまうため、変色を見つけた場合は早めに交換しましょう。
たとう紙を交換する理想の頻度は年に1回
たとう紙の交換時期は紙の種類によって異なりますが、和紙の場合は1年に1回の交換頻度が理想です。
たとう紙は吸湿性に優れていますが、その効果は2年程度で失われるため、早めに交換しておきましょう。
また、交換時期を逃してしまわないために、決まった周期で交換するのがおすすめです。
たとう紙に交換した日を記しておくことで、交換時期を忘れずに管理できます。
さらに、カレンダーやスマートフォンのリマインダー機能を活用して交換時期を設定すれば、たとう紙を広げなくても交換時期の確認が可能です。
たとう紙の交換に適した季節は梅雨明けから夏の終わり
たとう紙の交換は、梅雨明けから夏の終わりに行うのが効果的です。
この時期は、梅雨や台風の湿気によって着物にカビが生えたり、虫食い被害が発生したりし0やすいとされています。
そのため、湿度が安定する梅雨明けから夏の終わりの時期は、湿気を溜め込んだたとう紙を交換する絶好のタイミングといえるでしょう。
一方で、湿気が多い時期の前に交換すると、たとう紙がすぐに劣化してしまうため注意が必要です。
季節を見計らい、最適なタイミングで交換することで、着物を美しい状態でより長く保管できます。
たとう紙を購入できるのは呉服屋や着物クリーニング店・ネットでも
たとう紙を購入する際に候補となるのが、呉服屋、着物クリーニング店、ネット販売の3つです。
それぞれのメリットとデメリットを以下の表にまとめました。
購入場所 | メリット | デメリット |
呉服屋 | 最適なたとう紙を選んでもらえる。 | 店舗に足を運ぶ必要がある。 |
着物クリーニング店 | クリーニング後に交換してもらえる場合がある。 | すべての店舗で交換サービスがあるわけではない。 |
ネット販売 | 気軽に購入でき、複数枚のまとめ買いにも便利。 | 実物を確認できないためサイズに注意。 |
メリットとデメリットを比較して、どこで購入するかを決めましょう。
さらに着物の保管の質を上げるなら
収納の際にはたとう紙の存在が必要不可欠でしたが、さらに保管の質を上げるには以下のものも取り入れるとよいでしょう。
除湿剤
除湿剤を収納スペースの中に入れておくことで、着物の湿気を取り除くことができます。
湿度の高い梅雨の時期などは必須のアイテムともいえるでしょう。
ただし、除湿剤には使用期限があります。
期限を過ぎた状態で放置すると、逆に湿気を含むため注意が必要です。
防虫剤
防虫剤を使用することで着物が虫食いの被害にあうことを食い止めることができます。
しかし、防虫剤として使われる樟脳(しょうのう)やナフタリンは臭いが強いため、着物に臭いが付くのが嫌な方にはおすすめ出来ません。
その場合は無臭タイプの防虫剤を選ぶとよいでしょう。
おすすめは備長炭シート
着物を収納する際にもっとも適しているのが備長炭シートです。
備長炭シートには、湿度を一定に保つ調湿性に優れており、湿度が高くなりすぎることを防ぐ効果があります。
また、酸化した場所を好む虫や菌を寄せ付けないアルカリ化効果や、着物に付着した臭いを消す防臭効果も期待できます。
さらに、これらの効果は半永久的に持続するだけでなく、1,000円~2,000円の手ごろな価格で入手できるので、コストパフォーマンスに優れているのも魅力です。
たとう紙にブランド価値がついているものも
たとう紙は、着物の保存状態を保つだけでなく、有名ブランドの着物の品質証明にも役立つ場合があります。
一部の着物で採用されているブランドオリジナルのたとう紙は、買取時に着物が本物の証として評価される一つの要因となるため、ブランドオリジナルのたとう紙が付属している着物は高値で買取できる可能性が高まります。
着物の売却をお考えの方は、買取専門店ウリエルにご相談ください。
ウリエルでは着物の買取に力を入れており、在籍している経験豊富な査定士がしっかりとした根拠で査定するため、満足いただける金額で買取いたします。
まとめ
今回は、たとう紙の役割や使い方について紹介しました。
たとう紙は、着物を保管する際に包む紙のことで、カビやシワの防止に効果的です。
しかし、効果を最大限引き出すためには、正しい使い方をすることや適切な時期に交換することが大切です。
大切な着物を劣化させないためにも、たとう紙の使い方についてしっかり把握しておきましょう。
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