「一竹辻が花」の生みの親、久保田一竹とは?着物の特徴や歴史について解説
着物が好きな方は久保田一竹の名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
久保田一竹は一竹辻が花の生みの親であり、日本を代表する染色工芸家です。
彼の作品は国内外で高い評価を受け、数々の賞を受賞しましたが、それまでの道のりは決して順調なものではありませんでした。
ここではそんな久保田一竹の歴史や作品の特徴について解説します。
また、久保田一竹の着物を売りたいと考えている方は、相場や高く売るポイントについても紹介しているので参考にしてみてください。
久保田一竹(くぼた いっちく)とは
引用:http://www.tanshokai.jp/product/icchiku/index.html
ここでは久保田一竹の人物像や、彼の生み出した作品について詳しく解説します。
久保田一竹の歩んだ歴史
久保田一竹は1917~2003年にかけて活躍した日本の染色工芸家です。
1917年10月に東京都千代田区(かつての神田区)に骨董屋の息子として誕生し、14~19歳にかけては日本の代表的な染色技法である友禅や人物画、日本画を学びました。
久保田一竹が20歳のときに訪れた東京国立博物館で、室町時代に作られた「辻が花」の切れ端に魅了され、いつかそれを自身の手で復刻させたいという夢を持ちます。
しかし27歳の頃、太平洋戦争への徴兵やシベリアでの拘留などによって思うように「辻が花」の研究ができない日々が続きました。
やがて31歳のときに復員し、40歳でようやく「辻が花」の研究に専念できるようになりました。
そして、60歳のときに独自の構成と染色法を用いた自己流の辻が花である「一竹辻が花」を確立し、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ賞や文化庁長官賞を受賞しました。
その後は国内外での個展の開催や、自身の名前が付いた「久保田一竹美術館」の建設など精力的に活動を続け、85歳で生涯の幕を閉じました。
〈久保田一竹の経歴一覧〉
1917年(0歳) | 10月7日、東京都千代田区(かつての神田区)で生まれる |
1931年(14歳) | 友禅師である小林清に入門 |
1934年(17歳) | 大橋月皎のもとで人物画を学ぶ |
1936年(19歳) | 北川春耕のもとで日本画を学ぶ |
1937年(20歳) | 東京国立博物館で室町時代の、辻が花の小裂に魅了される |
1944年(27歳) | 太平洋戦争に応召。終戦後はシベリア抑留 |
1948年(31歳) | 辻が花の研究に着手 |
1961年(44歳) | 独自の染色法である一竹染を確立 |
1990年(73歳) | フランス芸術文化勲章シュヴァリエ賞受賞 |
1993年(76歳) | 文化庁長官賞受賞 |
1994年(77歳) | 久保田一竹美術館を河口湖町に開館 |
2003年(85歳) | 逝去 |
「一竹辻が花」の生みの親
久保田一竹は、国内外より高い評価を受ける「一竹辻が花」の生みの親です。
久保田一竹は、江戸時代に姿を消してしまった「辻が花」を復刻させるために、約20年を研究に費やしました。
そして、60歳のときにようやく完成した作品が「一竹辻が花」です。
現在「一竹辻が花」は、久保田一竹の息子である悟嗣氏が2代目久保田一竹として跡を継いでいます。
「一竹辻が花」の特徴
引用:http://www.itchiku-museum.com/itchiku/tsujigahana.html
久保田一竹が生涯をかけて生み出した「一竹辻が花」にはどのような特徴があるのでしょうか。
以下では、独自の構図や染色技術について解説します。
「一竹辻が花」独自の構図
「一竹辻が花」の構図の特徴は、絵画作品のようなダイナミックなデザインと華やかさです。
色を重ねていく重ね染めや、厚みのある絞り染めの組み合わせが「一竹辻が花」の独創的デザインを可能にしています。
また、久保田一竹は生地へのこだわりも強く、「一竹辻が花」には「一竹辻が花特殊生地」という独自の生地が使用されています。
「一竹辻が花特殊生地」とは、一竹工房別織の特殊三重織の高度な技術で作られる高級生地です。
生地には特殊金通しが使用されており、しなやかさと光沢が出るように工夫されています。
「一竹辻が花」の染色技術
「一竹辻が花」の染色技術の特徴は、植物染料ではなく化学染料を使用している点です。
化学染料は色が混ざりにくく取り扱いが難しいため、一般的な着物ではあまり使用されていません。
しかし久保田一竹は、より多彩な配色を実現するために化学染料の使用にこだわりました。
研究を重ねるうちに、化学染料をぬるま湯で調合させることに成功し、イメージ通りの染色と、縫い絞った部分への彩色を可能にしたのです。
一竹辻が花を象徴する「一竹星」
引用:https://www.yamanashibank.co.jp/fuji_note/sightseeing/itchiku.html
一竹辻が花に必ず入っているコバルトブルーの小さな星は、「一竹星」と呼ばれています。
一竹辻が花を象徴する「一竹星」は、久保田一竹がシベリアで抑留されていた際に、目に焼き付けたオーロラと星の輝きが再現されたものです。
久保田一竹は、シベリアで見た星に生きる勇気を与えられたと述べています。
久保田一竹の落款
落款(らっかん)とは、作者が仕立てたことを証明するサインのようなものです。
落款を見ると、作者や制作工房、作者によっては年代を特定できます。
久保田一竹の落款は、漢数字の「一」と象形文字の「竹」を組み合わせた、分かりやすいデザインです。
またこの落款は、初代久保田一竹と2代目久保田一竹で、「一」と「竹」の位置関係が微妙に異なります。
久保田一竹の作品
引用:http://shizuoka.mytabi.net/fuji/archives/kubotaicchiku-museum.php
一竹辻が花以外の久保田一竹作品には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下ではアート作品と実用品着物に分けて、4つの代表作を紹介します。
アート作品
久保田一竹の代表的なアート作品は、「光響(こうきょう)」と「富士山」です。
「光響」は、着物をキャンバス代わりにして、秋・冬からはじまる日本の風景や四季・海・宇宙を各80連作で描いた作品です。
それぞれ「光響80連作(秋)」「光響80連作(冬)」「光響80連作(宇宙)」と呼ばれます。
「光響80連作(春)」と「光響80連作(夏)」は一竹工房の弟子たちが引き継ぎ、現在も制作が進められています。
また、「富士山」は久保田一竹が大好きであった富士山の風景を表したものです。
龍雲たなびく赤富士を表現した「暁」や、夏の夕立後の富士山を表現した「音」など、気象の変化によって変化する富士の姿が描かれています。
実用品着物
代表的な実用着物は、「花戯(はなのたわむれ)」と「瑞華(みずは)」が挙げられます。
「花戯」は、ベージュとグリーンが混ざったような優しい色合いが特徴の着物です。
着物を着る際に前で布が重なる部分の衽(おくみ)には、花の刺繍が施されており、落ち着きのある上品な作品として知られています。
「瑞華」は、淡い青色をベースとして作られている着物で、着物の構図と色合い、柄の調和が素晴らしく、久保田一竹の優れた美的センスを伺える作品です。
一竹辻が花を見るなら「久保田一竹美術館」
引用:https://www.flickr.com/photos/enokido1007/22895096825/
富士山を望める位置に「久保田一竹美術館」があり、「一竹辻が花」を見ることができます。
久保田一竹美術館を久保田一竹自ら建設
1994年、久保田一竹が77歳のときに、自ら「久保田一竹美術館 本館」を建設し、3年後の1997年には本館の隣に新館を建設しました。
ピラミッド型の日本家屋である本館やガウディ建築を彷彿とさせる新館は、久保田一竹自身がこだわってデザインしたものです。
館内には、久保田一竹の「一竹辻が花」や「光響」などの着物作品や、彼が収集した世界各国のアート作品などが展示され、季節によって展示内容が変わります。
富士山と河口湖が間近なロケーション
久保田一竹美術館は、河口湖の湖畔から車で約10分の距離にあります。
久保田一竹美術館で掲げられている「人と自然と芸術の三位一体」と「新しい文化・芸術の発信地」の2大テーマに沿って、訪れた人々が安らぎを享受できる自然豊かな場所に建てられています。
久保田一竹作品には富士山を題材にしたものが複数あり、入館前と入館後でまた違った角度から富士山の眺めを味わえるのも魅力の一つです。
美術館にはカフェも併設されており、涼やかな風を感じながらゆっくりとくつろげる空間を提供しています。
未完の作品「光響」を見ることができる
久保田一竹美術館の本館では、未完成作品である「光響」を見ることができます。
「光響」は久保田一竹が一竹辻が花の集大成として手掛けた連作で、春と夏が未完成です。
館内では着物を追うごとに変化していくストーリー性を楽しんだり1着ずつ細かい技術を鑑賞したりすることで、より久保田一竹作品の素晴らしさを体感できます。
本館には光響以外にも、富士をテーマにした作品群やその他数々の代表作品が展示されています。
久保田一竹の着物の相場は?
引用:http://www.itchiku-museum.com/itchiku/
久保田一竹の着物の買取相場は~300,000円です。
価格は、着物や帯の流行、着物の状態、作成された年代などによって大きく左右されます。
高価買取が期待できる着物は、訪問着や振袖の柄が大きくて明るいものや繊細な作りのものです。
また、初代久保田一竹はすでに亡くなっていることから、初代久保田一竹の一竹辻が花は非常に希少性が高く、400,000円以上の高値が付く場合もあります。
〈買取価格の例〉
着物の種類 | 買取価格相場 |
---|---|
初代久保田一竹「桃山」一竹辻が花染め訪問着 | 500,000円 |
初代久保田一竹正絹「辻が花」訪問着・長襦袢セット | 280,000円 |
初代 久保田一竹 辻が花 袋帯 | 180,000円 |
久保田一竹(工房) ぼかし袋帯 | 60,000円 |
※相場は目安であり、買取価格をお約束するものではございません。
久保田一竹作品高価買取のポイント
引用:http://www.tanshokai.jp/product/icchiku/index.html
久保田一竹作品を高く売るポイントを3つ紹介します。
初代作か2代目かで価値が変わる
久保田一竹作品の買取価格は、初代作か2代目作かで変わります。
高価買取が期待できるのは、初代久保田一竹の作品です。
初代作か2代目作かは、落款のデザインの違いで見分けることができます。
しかし、落款の違いは微々たるものなので、着物の専門知識を持っていないと見分けが難しいでしょう。
裾切れや汚れには注意
着物に裾切れや汚れがある場合は、買取価格が下がるので注意が必要です。
裾切れとは、着物の裾の裏地が擦り切れている状態で、着物使用時に床と生地の摩擦によって引き起こされます。
また、肌が当たる袖口や襟に汗ジミができていたり湿気や温度で生地が変色していたりする場合があります。
落とせそうな汚れは柔らかい布で優しく拭き取り、陰干しをして着物の風通しをよくしてから査定に出しましょう。
一方で、裾切れやクリーニングに出さないと落ちないような汚れは無理に手を加える必要はありません。
無理に手を加えてしまうと、状態がひどくなり、久保田一竹作品の美術的価値を下げることにつながります。
価値を落とさないためにも、早めに査定に出すのがおすすめです。
業者によって買取価格は異なる
久保田一竹作品の買取価格は業者によって異なります。
久保田一竹作品は高価買取が期待できるものが多数ありますが、着物に精通した査定士でないと価値を見極め切れず、安く買取をされてしまう場合があります。
よって、査定に出す際は業者選びが非常に重要です。
着物を査定に出せる業者は店舗経営のリサイクルショップや古着屋、着物査定を実施している着物屋などさまざまですが、もっともおすすめなのはウリエルのような専門知識のある査定士が在籍する買取業者です。
店舗経営のリサイクルショップや古着屋では、着物買取後の販売ルートが限られていたり着物屋ではレートやグラム数で価格が決まっていたりするので、買取価格の低い傾向にあります。
一方で買取専用業者は、久保田一竹作品の査定経験と知識が豊富な査定士が在籍しており、ネットを通して幅広い販売ルートを確保できるので、高価買取が期待できます。
久保田一竹の着物を査定に出す際は、高価買取満足度No.1の実績があるウリエルにぜひお任せください。
無料査定では査定料、キャンセル料、出張費などすべて無料でご利用いただけます。
まとめ
久保田一竹が生涯をかけて作りあげた「一竹辻が花」は、彼の死後も国内外から厚い支持を受けています。
久保田一竹作品をお持ちであれば、生地が劣化してしまう前に査定に出すのがおすすめです。
お売りの際は買取価格に自信のあるウリエルにご相談ください。
2つの買取方法