金沢・加賀友禅の着物とは?技法や落款などの特徴、歴史、作家について解説
石川県金沢市の伝統工芸品である「加賀友禅」の着物について、その歴史や特徴を詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか。
今回は「加賀友禅」の歴史や特徴とともに、その買取価格や高く売るポイントについてご紹介します。
今回の記事を参考にしてみて「加賀友禅」の着物を適正な価格で売りたいと思った方は、専門知識豊富なウリエルに相談してみてください。
加賀友禅とは
引用:http://www.kagayuzen.or.jp/know/
石川県の伝統的工芸品
加賀友禅は、輪島塗(わじまぬり)や九谷焼(くたにやき)、山中漆器(やまなかしっき)と並ぶ国が指定した石川県の伝統的工芸品の一つです。
石川県には、国が指定した10品目の伝統的工芸品と、県が指定したその他26品目の伝統的工芸品があります。
国が指定した10品目の伝統工芸品は、以下の通りです。
● 輪島塗(わじまぬり) ● 金沢箔(かなざわはく) ● 山中漆器(やまなかしっき) ● 七尾仏壇(ななおぶつだん) ● 九谷焼(くたにやき) ● 金沢漆器(かなざわしっき) ● 加賀友禅(かがゆうぜん) ● 牛首紬(うしくびつむぎ) ● 金沢仏壇(かなざわぶつだん) ● 加賀縫(かがぬい) |
加賀友禅は石川県金沢市を代表する伝統的工芸品で、京都の京友禅、東京の江戸友禅と並び日本を代表する三大友禅の一つと言われています。
加賀友禅の歴史
「加賀友禅」は、室町時代から加賀の国で行われていた「梅染」という無地染の染め技法に由来しています。
17世紀中頃に模様が加えられるようになり、「加賀御国染」と呼ばれる色絵や兼房染、色絵紋の技法が確立されました。
これが現在の加賀友禅の始まりと言われています。
そして1712年には、京都で人気の扇絵師であり、「友禅染」の創始者と称される「宮崎友禅斎」が金沢の御用紺屋棟取の太郎田屋に身を寄せました。
その後、宮崎友禅斎が御国染の意匠の改良や友禅糊の技術を完成し定着させたことなどにより基礎ができ、加賀百万石の武家社会の中で発展していきました。
加賀友禅で有名な作家「木村雨山」
「木村雨山」は、大正から昭和に活躍した加賀友禅の染織家で着物作家です。
友禅としては、他にも田畑喜八や森口華弘といった人間国宝に認定された作家はいますが、加賀友禅では「木村雨山」だけが唯一人間国宝に認定されています。
木村雨山は高等小学校卒業後、当時加賀染めの名工として有名だった「上村雲嶂(うえむらうんしょう)」に加賀友禅を学び、1923年に友禅作家として独立しました。
「自分の作品にどれくらいの価値があるのか、常に世の人に問うべきだ」という考えのもと、さまざまな展覧会に出品し、1955年には友禅の部で人間国宝(重要無形文化財技術保持者)に認定されます。
その後、1965年には紫綬褒章、1976年には勲三等瑞宝章を受賞するなど際立った活躍を続け、1977年に86歳で生涯を終えました。
加賀友禅の特徴は?
続いては加賀友禅の特徴について解説します。
加賀友禅特有の色彩「加賀五彩」
「加賀五彩」とは、加賀友禅の基調となる次の5色です。
藍(あい) | 縹色(はなだいろ)よりも暗く、紺色よりも明るい青色 |
臙脂(えんじ) | 黒みを帯びた深くつややかな紅色 |
黄土(おうど) | 赤みがかった黄色 |
草(くさ) | 若草が成長して色濃くなったようなくすみのある濃い黄緑色 |
古代紫 (こだいむらさき) | 少し赤みを帯びたくすんだ紫色 |
加賀友禅では、この「加賀五彩」の濃淡を繊細に使い分け配色をしていきます。
1つの図案に用いられる色は50色にも及ぶと言われます。
同じく日本三大友禅の京友禅と比較して、深く落ち着いた色合いであることが特徴です。
加賀友禅の主な図柄
加賀友禅の主な図柄には「緻密で写実的な草花模様」と「虫食い葉(わくらば)」があります。
加賀友禅の特徴の一つは、見た姿をそのまま作家の感性で図柄を描く点です。
「虫食い葉」は、葉が朽ちて変色したり虫食い跡の黒い斑点が模様としてそのまま描かれたりするものですが、こちらも写実的な加賀友禅ならではの技法です。
刺繍や金箔が用いられた豪華できらびやかな京友禅と比較し、写実的な絵画調の柄からは武家社会の堅実で落ち着いた趣を感じることができます。
加賀友禅の真骨頂とも言える2つの技法
加賀友禅にとって重要な「外ぼかし」と「虫食い」という技術について解説します。
外ぼかし
引用:http://www.kagayuzen.or.jp/know/
加賀友禅の真骨頂とも言える技法の一つが「外ぼかし」です。
京友禅では模様の内側から外側の輪郭に向かってぼかしを入れていきますが、加賀友禅は外側の輪郭から内側に向かって段々と色を薄くし、ぼかしを入れていきます。
この「外ぼかし」により、加賀友禅の柄には奥行きや立体感が生まれるのです。
また、「外ぼかし」以外のぼかし染の技法として「三色ぼかし」と言われる、木の葉の一部に枯れや紅葉の様子を三色で表す技法も用いられます。
虫食い
引用:https://library.kimono-yamato.co.jp/post-005/
朽ちた病葉(わくらば)や葉に虫食い跡の黒い斑点を描く「虫食い」は、加賀友禅の真骨頂とも言える技法の一つです。
見た姿をそのまま描くことを重要視する加賀友禅ならではの技法ですが、あえて草花の葉に「虫食い」を描くことで、この「虫食い」がデザインのアクセントになっています。
すべての葉に必ず「虫食い」を描くという訳ではなく、作家が必要だと感じたポイントにのみ用いられます。
加賀友禅は染色以外の技法は用いない
箔押しや絞り、刺繍などを用いた華美な京友禅とは異なり、加賀友禅には染色以外の技法は使わず、染色のみで草花を中心とした自然を美しく描写する特徴があります。
これは加賀友禅がともに発展してきた、武家社会の質実剛健な気風が感じられるポイントです。
加賀友禅の主な制作工程
生地に模様を染める技法の一つである友禅染は、のちを使うことで隣り合う色と色がにじまないようにし、生地の色と模様を染め分ける技法です。
この友禅染には「手描き友禅」と「板場友禅」という2つの技法があります。
手描き友禅 | 紙に描かれた下絵をもとにして筆を使って絵を描くように染め上げる技法 |
板場友禅 | 1枚の長い板に生地を張り、型紙を置いて染める技法 |
ここでは、加賀友禅のうち、「手描き友禅」の制作工程をご紹介します。
図案
自然の美しさを文様という色や形に変えて表現をします。
仮仕立て
白生地を着物の形に仮縫いをします。
下絵
仮仕立てをした生地に、青花の汁を用いて模様の輪郭を細い線で描いていきます。
糊置き
下絵の線に沿って、筒から糸目糊と呼ばれる糊(のり)を引いていきます。
この糊が彩色の際に染料が外に侵食しないための防波堤の役割をします。
地入れ
後の工程で色ムラやにじみなどが出ないように防ぐための準備作業です。
地入れ液と呼ばれる薄めた糊を生地の全体に塗り込み、伸子針(しんしばり)と張り木(はりぎ)と呼ばれる道具で生地を部屋いっぱいに広げて張ります。
彩色
彩色は工程のメインとなる作業です。
加賀五彩をベースに筆とはけを使って色を入れていきます。
中埋め(糊伏せ)
事前に下蒸しをしたあと、着物全体の色を染めるときに模様部分に地色が入らないよう糊で模様全体を埋めます。
地染め
着物全体の色をムラのないように引く工程で引き染めとも呼ばれます。
本蒸し
引き染めをした着物全体の色が乾いたら、蒸気の箱の中で数十分蒸して染色を定着させます。
水洗い
友禅流しとも呼ばれる工程で、着物に付いた余分な染料や糊を洗い落とす工程です。
以前は自然の川を利用して行われていました。
仕上げ
乾燥させたあと、着物に蒸気をあてて生地をやわらかくしながらシワを伸ばし、幅を整えていきます。
その後、顔料などで仕上げをして、彩色補正を行えば加賀友禅の完成です。
実際の加賀友禅を見るなら加賀友禅会館へ
加賀友禅会館は、加賀友禅の拠点であり、訪れた人が加賀友禅に親しむことができる空間です。
加賀友禅の実演や手作り体験、試着などを通じて加賀友禅に触れ合うことができます。
施設名称 | 加賀友禅会館 |
所在地 | 石川県金沢市小将町8−8 |
電話番号 | 076-224-5511 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
休館日 | 毎週水曜日(祝日を除く) |
URL | http://www.kagayuzen.or.jp/hall/ |
加賀友禅の主な製造元
株式会社大若染織
屋号の「きもの処 凛屋(りんや)」は、人口あたりの小売店数が日本一の七尾で明治40年から営業を続ける老舗です。
着て出かけることを思い描けるファッションとしての「きもの」を提案することをコンセプトに、きものや帯のほか和の暮らしにまつわる雑貨や器、文具なども展開するきもののセレクトショップとなっています。
店舗名称 | きもの処 凛屋 |
所在地 | 石川県七尾市一本杉町8 |
電話番号 | 0767−52−3700 |
営業時間 | 9:30〜18:00 |
定休日 | 火曜日 |
URL | http://www.kagayuzen.or.jp/hall/ |
友禅工房「文庵(もんあん)」
加賀友禅の伝統工芸士である太田正伸(昌伸)さんが営む「友禅工房 文庵(もんあん)」は、堅牢度(抵抗性)の高い染料を使うことにより、色あせに強い作品づくりをしていることが特徴です。
また、完全受注生産で、発注者が持ち込んだスニーカーに友禅柄を手描きで描く世界に一足だけの工芸スニーカーなど、着物や帯以外にも変わった取り組みをしています。
「文庵」の「文」は着物の意味も含んでおり、着物は上前と下前を合わせて着ることから「合わせる」「コラボ」などの意味をもたせたネーミングでもあります。
店舗名称 | 友禅工房 文庵 |
所在地 | 石川県金沢市高尾3−75−1 |
電話番号 | 076−298−9172 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
定休日 | 日曜日 |
URL | http://studio-mon-an.com/koubou/ |
加賀友禅「毎田染画工芸」
伝統工芸を「古いもの」ではなく「現在へ続くファッションの積み重ね」と考える「毎田染画工芸」は、加賀友禅のきものや小物以外にも、加賀友禅のエッセンスを活かした室内装飾や店舗装飾などに幅広く積極的に取り組んでいる会社です。
店舗名称 | 加賀友禅 毎田染画工芸 |
所在地 | 石川県金沢市本多町3-9−19 |
電話番号 | 076−221−3365 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
定休日 | 不定休 |
URL | http://www.maida-yuzen.com/ |
加賀友禅の販売価格や買取相場は?
「加賀友禅」の着物について、新品と中古の販売価格と買取相場をリサーチしてみました。
種類 | 販売価格(新品) | 販売価格(中古) | 買取相場 |
振袖 | 150,000円 | 60,000円 | 〜60,000円 |
訪問着 | 150,000〜200,000円 | 130,000円 | 〜100,000円 |
黒留袖 | 100,000〜200,000円 | 60,000円 | 〜60,000円 |
小紋 | 30,000円 | 10,000〜20,000円 | 〜15,000円 |
色留袖 | 150,000〜300,000円 | 150,000円 | 〜120,000円 |
付下げ | 150,000円 | 50,000〜100,000円 | 40,000〜80,000円 |
※相場は目安であり、買取価格をお約束するものではございません。
上記はあくまで一般的な加賀友禅の価格と相場ですが、有名作家の作品になるとさらに高い買取金額が期待できます。
一例を挙げると、加賀友禅で唯一の人間国宝である木村雨山の作品は〜500,000円、由水十久の作品は〜200,000円が相場価格となっています。
作家の名前 | 買取相場 |
木村雨山(きむらうざん) | 〜500,000円 |
由水十久(ゆうすいとく) | 〜200,000円 (初代のほうが高額) |
中井節子(なかいせつこ) | 〜500,000円 |
柿本市郎(かきもといちろう) | 〜500,000円 |
藤藁隆(ふじわらたかし) | ~70,000円 |
能川光陽(のがわこうよう) | ~25,000円 |
毎田仁郎(まいだじんろう) | ~25,000円 |
水野博(みずのひろし) | ~40,000円 |
成竹登茂男(なるたけともお) | ~25,000円 |
談議所栄二(だんぎしょえいじ) | 〜100,000円 |
百貫華峰(ひゃっかんかほう) | ~60,000円 |
高平良隆(たかひらよしたか) | ~50,000円 |
中町博志(なかまちひろし) | ~50,000円 |
※相場は目安であり、買取価格をお約束するものではございません。
買取価格を上げるポイント
お持ちの加賀友禅を手放す際には、なるべく高く売りたいと考えるものです。
続いては高く売るポイントをご紹介します。
証紙や落款を提示する
引用:http://www.kagayuzen.or.jp/outline/
着物が本物であることを証明する証紙や、作家が作ったことを証する落款がある場合、買取価格が上がりやすくなります。
加賀友禅の証紙には、「手描友禅」に貼付する赤色の証紙と「板場友禅」に貼付する紫の証紙があります。
また、落款とは加賀染振興協会に登録している加賀友禅作家であることを証する印章です。
落款がどの作家のものかは協同組合加賀染振興協会のホームページから検索できますので気になる方は検索してみましょう。
(参考)協同組合加賀染振興協会:http://www.kagayuzen.or.jp/artistslist/
着物の状態を整える
着物の買取価格は状態のよいほうが当然高くなります。
着物を保管するときの3つのポイントをご紹介します。
着物を着たときのままタンスにしまっている方はぜひ参考にしてみてください。
陰干しをする
着物を着た後は、和服用のハンガーにかけて通気性がよい場所で12〜24時間陰干しをしましょう。
次に、陰干しをしている間に汚れの確認をしつつ、やわらかい布やブラシでホコリを払っていきます。
陰干しは、着用後だけではなく、天気のよい日を狙って年に3回程度行うと効果的です。
なお、1日を超えて長時間陰干し続けるのは型崩れにつながるため、注意しましょう。
たとう紙に包む
保管している着物が正しい畳み方で保管されているか、確認してみましょう。
もしシワができてしまっている場合は正しく畳まれていない可能性がありますので、正しい畳み方で畳み直して保管し直します。
畳み方は、一般的な「本畳み」と呼ばれる畳み方で問題ありません。
正しく畳むことができたら和服用のたとう紙に包んで保管します。
その際、たとう紙が湿気で変色していた場合には、たとう紙も一緒に交換してください。
なお、箔や刺繍などの装飾がある着物については、和紙や薄い白布を装飾部分にあてておくようにします。
これにより、箔落ちや変色を防ぐことができます。
湿気と汚れを防ぐ
着物にとって「湿気」と「汚れ」は大敵です。
着物は、通気性がよく、湿気が少ない場所に清潔にした状態で保管しましょう。
できることなら、和服用の乾燥剤などをたとう紙の上におき、桐たんすや衣裳箱など防湿効果が高いものに収納するのが最適です。
なお、着用時に化粧汚れや汗染みが付いてしまったときは、自分で染み抜きなどをするよりも専門の業者に依頼したほうがよい場合もあります。
もし気になる汚れがある場合には、必要に応じて一度専門業者に相談してみましょう。
着物買取専門店で売る
着物の買取金額を高くしたいならリサイクルショップやフリマアプリではなく、着物買取専門店で売るのがおすすめです。
最近はリサイクルショップで手軽に利用できるようになりましたが、査定の難しい着物の価値を正しく判断できる査定士がいない可能性が高いからです。
リサイクルショップによっては、衣類を重さだけで査定するところもあるため、価値のある着物であれば、なおさら価値に見合わない価格で売却してしまうこともあり得ます。
そのため、着物を高く売りたいのであれば、専門知識が豊富で正しく価値を見極めてくれる着物買取専門店で売ることが大切なのです。
まとめ
今回の記事では「加賀友禅」の特徴や歴史、作家とともに、買取相場や高く売るときのポイントについて紹介しました。
武家社会とともに発展してきた「加賀友禅」は、「加賀五彩」を基調とした深く落ち着いた色合いと染色以外の技法は使わず、染色のみで草花を中心とした自然を美しく描写するという特徴があります。
「加賀友禅」の買取を依頼するときは、専門知識が豊富で価値を正しく見極めてくれる着物買取専門店に依頼しましょう。
もし「加賀友禅」の買取を依頼する専門店にお悩みのときは、経験豊富な査定士が在籍する着物買取専門店「ウリエル」にぜひ一度ご相談ください。
2つの買取方法