着物買取2021年08月27日

人間国宝「羽田登喜男」の作る羽田友禅とは?着物の特徴や歴史について解説

日本を代表する着物作家の羽田登喜男をご存じでしょうか。

人間国宝の友禅作家である羽田登喜男の作品は、国内外で高い評価を受け、さまざまな賞を受賞してきました。

そんな彼の作品は羽田友禅とも呼ばれ、京友禅と加賀友禅を融合させた独自のデザインを特徴としています。

ここでは羽田登喜男という人物の歴史や作品の特徴について解説します。

また、羽田登喜男の着物の売却をお考えの方は、買取価格の相場や高く売るポイントについて紹介するので参考にしてみてください。

羽田登喜男(はだ ときお)とは

羽田友禅 鴛鴦

引用:http://hatakoubou.com/hata/work_tokio.html

羽田登喜男は、1911~2008年にかけて活躍した日本を代表する手描き友禅作家です。

彼の作品は「羽田友禅」と呼ばれ、京友禅と加賀友禅を融合させた独自のデザインを特徴とします。

「羽田友禅」は国内外から高い評価を受け、1988年に人間国宝に認定されました。

特に「鴛鴦(おしどり)」の文様は、羽田登喜男を代表する人気の作品です。

多くの受賞歴

羽田登喜男が独立し、自身の工房で作品を作り始めてから、生涯に渡ってさまざまな賞を受賞してきました。

〈主な受賞歴一覧〉

・第2回日本伝統工芸展入選
・第23回日本伝統工芸展最高賞
・藍綬褒章受賞
・京都府美術工芸功労賞
・紺綬褒章
・勲四等瑞宝章
・重要無形文化財「友禅」保持者(人間国宝)
・京都府文化賞特別功労賞
・京都市文化功労者

作品がダイアナ妃に献上される

1986年、イギリス王室のダイアナ妃が来日した際に、羽田登喜男の振袖が献上されました。

このときに献上された振袖は「瑞祥鶴浴文様(ずいしょうかくよくもんよう)」といわれ、当時ダイアナ妃が着用していた帽子の色に合った、鮮やかなオレンジの色彩が特徴です。

模様には松と鶴が描かれており、目を惹くデザインになっています。

ダイアナ妃が振袖をまとった美しい映像は全世界に配信され、羽田登喜男の作品が世界に認知されるきっかけとなりました。

羽田登喜男の歩んだ歴史

羽田登喜男は1911年に石川県金沢市で造園師の三男として誕生します。

14歳のときには地元金沢市で南野耕月から加賀友禅を、20歳のときには京都府で曲子光峰から京友禅を学びました。

刺繍や金銀箔が使用される華やかな加賀友禅と、自然の風景を写実的に表現する加賀友禅の学びが羽田友禅の原点です。

羽田登喜男は1937年に独立し、京都市上京区に自身の工房を作りました。

以降、引退するまでの約70年間、優れた作品を作り続け、日本伝統工芸展最高賞や藍綬褒章をはじめとするさまざまな賞を受賞しています。

受賞歴やダイアナ妃へ振袖の献上の他にも、重要無形文化財に指定されるなどの功績を残しました。

〈経歴一覧〉

1911年 (0歳)石川県金沢市で生まれる
1925年(14歳)南野耕月に入門し、加賀友禅を学ぶ
1931年(20歳)曲子光峰に入門し、京友禅を学ぶ
1937年(26歳)独立し、上京区に工房を構える
1955年(44歳)第2回日本伝統工芸展入選
1962年 (51歳)社団法人日本工芸会理事に就任
1976年 (65歳)藍綬褒章受賞、第23回日本伝統工芸展最高賞
1978年 (67歳)京都府美術工芸功労者受彰
1979年(68歳)紺綬褒章受章
1982年(71歳)勲四等瑞宝章受章
1986年(75歳)ダイアナ妃に振袖を献上
1988年 (77歳)重要無形文化財「友禅」保持者(人間国宝)に認定
1990年(79歳)京都府文化功労賞特別賞受賞、京都市文化功労賞受彰
2004年 (93歳)蟷螂山のすべての懸装品(けんそうひん)の手描友禅での制作が完成
2008年(97歳)逝去

「羽田友禅」の特徴

羽田友禅

引用:http://www.hatakoubou.com/hata/work_tokio.html

羽田登喜男が作る「羽田友禅」にはどのような特徴があるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

京友禅と加賀友禅を融合させた「羽田友禅」

「羽田友禅」の特徴は、京友禅と加賀友禅の2つの伝統美を融合させた独自のデザインです。

京友禅の特徴はやわらかい色合いと華やかさで、装飾には刺繍や金銀箔が多く使用されています。

一方で、加賀友禅は自然の風景を写実的に描くのが特徴で、華やかさを演出する京友禅とは対極的なデザインです。

羽田登喜男は、このような京友禅の華麗さと加賀友禅の配色を融合させ、「羽田友禅」を完成させました。

作家による一貫作業

羽田友禅は、デザインから仕上げまでの約20~30工程を1人の作家が行なっています。

通常、着物制作は分業で行うのが一般的です。

しかし、すべての工程を同じ作家が一貫して行うことで納得のいく質になるという羽田登喜男の考えのもと、羽田友禅は一貫作業で作られています。

実際に一貫作業で作品を制作することで、作家が作業工程を自由に組み立てることができ、細部までこだわった美しい文様ができるのです。

その遺志は息子の登や弟子にも受け継がれており、現在でも羽田友禅は一貫作業で作られています。

羽田友禅の作風

羽田友禅は、糸目糊(いとめのり)堰出(せきだ)し糊などの伝統的な技法を駆使した緻密な作風を特徴としています。

糸目糊とは、下絵の線に沿って円錐形の渋紙製の糊筒に入った糊を握力で押し出しながら、生地の上に細い糸のように糊を乗せていく技法です。

水洗いをすると糊を乗せた線が白く浮き上がり、友禅染の配色を引き立たせます。

堰出し糊は、糸目糊を置いた後に挿し友禅の染液が地に出るのを防止する目的で使用される糊です。

正しく置かないとムラや不上がり(本来の目的とする仕上がりが得られない失敗のケース)の原因となるので、堰出し糊は扱いが難しい糊と言われています。

このような糊の技法を駆使し、細部までこだわり抜く羽田登喜男の作品作りへの姿勢が、多くの人々を惹きつける理由です。

羽田友禅を代表する文様「鴛鴦(おしどり)」

鴛鴦

引用:http://hatakoubou.com/hata/work_tokio.html

羽田友禅を代表する文様は「鴛鴦」です。

羽田登喜男は「鴛鴦」を生み出すために、文様の部分を白く残して染め上げる白揚げや、細かい粉状にした金砂を接着剤で布地にまきつける金砂子のような加賀友禅の技法を用いました。

写実的な「鴛鴦」は羽田友禅の中でも人気が高い作品で、野の草花を豪華な文様に用いているオリジナリティ溢れるデザインが、多くの人の心をつかんでいます。

羽田登喜男の落款

落款(らっかん)とは、作者が仕立てたことを証明するサインのようなものです。

落款を見ると、作者や制作工房、作者によっては年代を特定が可能です

羽田登喜男の落款は正方形の角印に「登喜男」と刻印されたもので、右側半分に「登」、左側には縦書きで「喜男」と文字が書かれています。

ちなみに、羽田登喜男の息子である登の落款は、正方形の角印に「登」と刻印されており、登喜男の孫にあたる登喜の落款は、正方形の角印の右側に縦長の「登」、左側に縦長の「喜」という文字が刻まれています。

羽田登喜男の着物の相場は?

羽田友禅 買取

引用:http://hatakoubou.com/index.html

羽田登喜男の着物の相場は、1枚あたり100,000円前後です。

価格は、着物や帯の流行、着物の状態と作成された年代などによって変動しますが、人間国宝として国内外から評価の高い羽田登喜男の着物は希少性も高いため、高価買取が期待できます。

なかでも「鴛鴦」の文様羽田友禅訪問着などは150,000円以上の値が付くこともある人気の品です。

また、羽田登喜男が手がけたものであれば、着物だけでなく正絹名古屋帯や袋帯でも、20,000~40,000円程度の値が付きます。

羽田登喜男の作品の高価買取のポイント

着物 買取

羽田登喜男の作品を高く売るポイントを3つ紹介します。

羽田友禅は人気が高い

人間国宝に指定されている羽田登喜男の手がける作品は、他の作家の着物よりも高く取引がされています。

羽田友禅は着物としての希少性が高い友禅で、その中でも羽田友禅を代表する「鴛鴦」の文様は特に人気が高い着物の一つです。

保存状態をよくする

羽田登喜男の着物を少しでも高く売るためには、保存状態をよくすることが非常に大切です。

現在出回っている羽田登喜男の着物はほとんどが中古品であるため、できるだけ新品に近い方が買取価格もアップします。

着物は湿気に弱く、カビの発生や変色が起きやすいので、定期的に衣紋掛けにかけて陰干しをし、着物の中に熱がこもらないようにしましょう。

タンスで保存をする際には、きれいに畳んだ着物をたとう紙に包み、2年ごとにたとう紙を交換すると虫食いやシミ・カビ予防に効果的です。

また、におい対策を併せて行うと、買取価格アップにつながります。

査定日の前日までに風通しのよいところに着物を干し、湿気を蒸発させてできるだけにおいを取り除くようにしましょう。

付属品なども探しておく

着物を査定に出す前に、付属品を探しておきましょう。

買取の際は証紙や落款などの付属品の有無で査定額が変わります。

証紙とは、着物の素材や産地、織り方、染め方などが記載されている品質証明書のようなもので、高級な着物であることを証明するものです。

ですので、証紙が付属している場合は大切に保管し、査定時に必ず提出するようにしましょう。

作者が仕立てたことを証明する落款は、着物の衽(おくみ)か襟先にあることが多く、羽田登喜男の作品にはどこかに「登喜男」の文字が書いてあります。

まとめ

人間国宝の羽田登喜男が作る「羽田友禅」は、写実性のある加賀友禅と、華やかな京友禅が融合された羽田登喜男オリジナルの友禅です。

その独創性が国内外から評価され、さまざまな賞を受賞してきました。

羽田登喜男の作品は希少性が高く、人気も高いため、作品をお持ちであれば着物の状態が悪くならないうちに査定に出すのがおすすめです。

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